その四の四 父の話


 昨日見に行った物件は家賃も手頃で間取りもそこそこ良かった。
ただ、場所がちょっと悪かった。
繁華街のど真ん中。
前の住人は夜の仕事をしていた人らしい・・・。
大家さんには保留すると伝えて当麻の道の駅で一夜を過ごす。
メールで別の不動産屋ともやり取りしていたので今日はそこから物件を探す。

 色々と物件を確認していく。
一番初めは部屋が狭かったものの駐車場にはロードヒーティングがしてあり冬助かる。
しかも裏山がスキー場なのには参った。
二番目は値段はそこそこ安くて部屋が広い。
但し前入居者はヘビースモーカーみたいで壁が黄色い。
三番目は長途半端でパス。
四番目は北向きでなければ決めていただろう・・・。
インパクトとしては一番目の「裏山がスキー場」というところだろうか。
ロードヒーティングも実は魅力的。
なのだけど結局としては二番目を選んだ。

 契約をするためには保証人がいる。
そこで父親と話をしなければならない。
実は北海道に住みたいという話をまだしていなかったりした。
まだ酒を飲んでいないうちに掛けないと話がややこしくなる。
不動産屋を離れて車の中から電話を掛けた。
 電話には父が出た。
「実は・・・」
と話をする。
とりあえずは話を聞いてくれたもののやはり電話ですべき話ではないのは明白だ。
あれこれ言われた後に
「一人暮らしはいいけど・・・両親の後始末だけはしっかり頼むよ。」
「北海道には知人が多いから何かあったらその伝を使いなさい。」

 電話を切った。
目が見えるようになるまで暫く運転することが出来なかった。
大袈裟かもしれないがこれが今生の別れなのかもしれないと思うと何てことをやっているのだろうと思う。
しかし一人の人間としてやっていくにはこれが必要なのだと思っている。
ガスランタンの灯が消えようとしている。
まもなくランタンの代わりに蛍光灯が照らしてくれることだろう。
一つの旅が終わって、新たな旅の出発を迎えようとしている。
今日は酒を飲まずにはいられない・・・

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